「ブランドブームの終焉?」
今年に入ってから一部のマスコミで「ブランドブームにかげりが見える」との記事が掲載されています。これまで、セールを行っていなかったブランドがセールをしたとか、ルイ・ヴィトンの売上の伸び率が鈍化したとかがそれらの記事の基となっています。まあ、書いているのはほとんどがいわゆる経済誌の記者で、経済のことはわかってても、ファッションについては良く知らない人が多いみたいで、誤解しているところも(というか勝手な思い込みで記事を書いてる?)見受けられます。

まず、ルイ・ヴィトンの勢いは、衰えていないと思います。ヴィトン社はほぼ全国ネットワークが完成したことで、青山や神戸でみるように(青山をオープンすることで、赤坂店を閉店させた)小型のショップではなく、大型店をオープンし近くの小型店は閉鎖する「スクラップ&ビルド」に移行しています。店を増やせば売上は上がるでしょうが、これ以上、小型店を増やしてもステータスが下がるだけだからです。事実、売上は伸びており、一概に伸び率が減ったから失速というのは安易過ぎるでしょう。2003春夏の村上隆コラボ・バッグは品切れ状態です。

ただ、日本でのブランドの売れ方は、伝統あるラグジュアリーブランドが着実に売れつづけるものと一時期のシャネラーや、バゲットが流行ったフェンディ、ナイロンバッグのプラダのようにブームとなって、売れるケースがあります。こうした目に見える、誰が見ても明らかなブームというのは、ここ最近ないかもしれません。ティファニーも低価格帯でオープンハートやビーンズに続くブームが作れなかったため売上が落ちたと指摘されています。

ブームは必ず失速します。これはもう仕方のないことです。だからといって、それだけで高級ブランドの失速というのは早計すぎる気がします。ラグジュアリーブランドはディオールの例を見るまでもなく伝統とその知名度から、復活する例も数多くあります。そこがユニクロなどと違うところです。また、ブランドというのは組織上別会社になっていますが、トータルで見ればコスメによる利益率が、とても高く、フレグランスは限定品も含め売れ続けています。

確かに不況の影響もあり、全体でみれば高級ブランドの売上は落ちているかもしれませんがコーチや、サマンサタバサ、セシル・マクビー、プリングルといったブランドは売れています。(規模は小さいかもしれませんし、勢いは衰えたとはいえ、セシル・マクビーのここ1、2年の躍進は単なる109ブームだけではなく、もっとマスコミが取り上げていい話題だと思います。)ただし、セシル・マクビーはラグジュアリーブランドではありません。プリングルも新デザイナー、スチュワート・スコットデイル起用によるブランドリニューアルよりも雑誌に出た「ベッカムも着ている」というアピールが成功しました。

つまり、今の購入者は、ヴィトンのデザイナーがマーク・ジェイコブスでペリー・エリスで頭角をあらわしたといったことよりも、雑誌への取り上げ方、ビジュアルイメージ、ショップの雰囲気などに左右されます。その場合、ラグジュアリーであるかどうかは関係なく、ヴィトンのバッグをもち、プリングルのニットを着て、セシル・マクビーを持つことに抵抗はないわけです。

結論としてブランドがブランドであるというだけで、売れた時代は終わったと思います。欧米の有名ブランドをただ、日本に持ってきただけでは売れないでしょう。マーケティグ力に優れているといわれるLVMHにしても、セリーヌやロエベ、ジバンシィ(コスメ以外)は思ったほどは売れていません(ヴィトンやディオールに比べてという意味ですが)。ブランドの個性や伝統に加えて日本独自のマーケティング、日本の消費者に受け入れられる展開をしない限り、成功はおぼつかないでしょう。一方で、ワールドと並び日本でトップクラスのマーケティグ力を持つアパレルメーカー、オンワード樫山がブリッジゾーンだけでなく、GIBOをはじめとしてラグジュアリーに力を入れつつあるのは象徴的なことではないでしょうか。

高級ブランドはこれからも売れつづけます。ただし、売れないものとの差は激しくなるでしょう。撤退するところも数多く出てくると思います。これは日本に限ったことではなく、パリでのティエリー・ミュグレーの廃止、ニューヨークでジョン・バートレットが終了したことにも表れていると思います。

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